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2010年1月 7日 (木)

それは子守娘達の魂の叫び……

29. 綺麗な豊かな心を取り戻さねば……

 田山さんは、球磨地方独特の取っ付きの悪い処があるが、話し出すと奥が深く、気心が知れて来ると子供の様に心を開いて呉れる。夜を徹して話す事も厭(いと)わない。
 こよなく自然を愛し故郷を愛し、人間愛に満ち満ちた人である。

 その夜、例の食堂兼スナック“五木”に行って見た。私は、もうすっかり常連さんである。村の青年団や、村役場の人達と談笑し乍らの酒は、実に旨い。
“球磨弁まったし”にも馴れて、大体、何を云ってるのか分かるようになっていた。気が付くと連られて私も球磨弁で喋っている。
 若き青年団達は燃えていた。村を捨てる気等全然無い。何とか村を再建しようと励まし合っている姿を見て、これは見込みあるぞ、と思った。これ又、村役場の若い人は、未来の五木村の構想を夢の様に語って呉れた。
 誰も村を捨てようとしていない。若い息吹が芽生え出している。私は嬉しくなって来た。

 元来、日本人は素朴で人の和を尊び、自然を愛し、自然に沿って生きて来た民族である。人の心は通い合い、豊かで充実していた。第二次世界大戦で敗戦国となった日本は、民主主義を導入して合理の元に、復興に躍起になった。そして四十余年を経過した今、先進国家に、経済大国に成長したのである。
 焼跡の焦土の中で、ひもじい思いをした日本人は、物理の豊かさを追求し、装(なり)振り構わず懸命に働いた。その所業は自然を破壊し、人間関係を破壊して行ったのである。物理的に豊かになればなる程、人々は非人間的になって行ったのである。
 夫が妻を、妻が夫を保険金目当てに殺害したり、親が子を、子が親を、一寸腹が立った位で殺したり、教師が、警官が、政治家が平気で法を犯すという、以前には考えられなかった事が日常茶飯事で行なわれているのである。
 今や、日本は世界で最悪の非人間国となって了った。綺麗な、豊かな心を取り戻さなければならない。森林がもたらす数々の恩恵を知れば、それを伐るなんて事は出来ない筈である。自然を破壊して、ダムやゴルフ場を造る事よりも、自然に調和する事を学ばねばならない。敗戦から四十数年で、見事な物理的な復興を果たした日本は、その代償に一番大事なものを失くして了った……       つづく。

 

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