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2010年1月 8日 (金)

それは子守娘達の魂の叫び……

30. 心の砦(とりで)が崩れる時……

 自然と人間社会のバランスを崩せば、何(いず)れ大惨事が遣(や)って来る。我々人間は愛を勉強する為に今生に遣(つか)わされて来たのである。大自然の恩恵を享けて、人と人との和を尊び、愛し愛され素的な人生を、素的な人間社会を構築する為に生かされて居るのである。大自然に逆らい、それを傷つけ、人を裏切り、騙し、自分丈良い思いをする為に生きているのでは無い。
 我々の心のふる里“五木村”がダムの湖底に沈む時、日本に、世界に大きな悲劇が遣って来るだろう。
 人間の最後の「心の砦」が崩れる時、大惨事に見舞われるであろう。それは、当然の事である。経済成長の為に犯した、罪の罰を受けなければならない。その代償は、想像を絶する程大きい。昭和の末期症状に在る現在(昭和六十三年)、今こそ反省しなければならない。
 今、反省しなければ――今、改めなければ――それを免(まぬが)れる事は出来ない。
 人は皆、成長して親から巣立って行くように、若くして旅立ち、色んな勉強をして、古里に帰る。
 故郷の土壌に帰る可(べ)きである。そこに根が有るからだ。帰巣本能こそ人間本来の姿である。ふる里の土に眠るのである。
 その故郷を失くしてはならない。その故郷を沈めてはならない。それは、人間が人間である事を否定する行為なのである。
 田山さんは、故郷を捨てて行った人達の事を想い、
「何とか観光立村にして、出て行った人達が帰って来れるようにしたいです。一緒に遊び、育った人達がバラバラになって了うなんて、こんな哀しい事はないですよ。村を興す人材が欲しい。その人達と共に、もう一度村を再建して、皆仲良く、楽しく暮らせる五木村にせにゃいかんですわ。それ迄は私も頑張りますよ。この侭じゃ、死んでも死に切れませんからね」
 田山さんの心境と、子守唄の一節とが重なって、私の胸に何時までも残る。

     ♪ 森の雀も 別れを告げて
        里へ出ていく わしゃ ひとり ♪

 (二十年前に書いた五木村、その五木村は今も沈んでいない)  五木村、おわり。
 
         次は草津温泉物語へと……つづく。

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