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2010年2月 9日 (火)

肝っ玉姐さんの湯の町騒動記 12

12. “あじさい”は人間マップ…

 千春の努力は、草津の人達に受け容れられて行った。持ち前の飾り気のない屈託のない性格が扶(たす)けて呉れた。
 
 スナック“あじさい”は草津の町の人間マップである。地元の人達が気楽に、気策にやって来る。町長さんから町役場の人達。消防団に青年団。警察の署長さんからお巡りさん。ホテルの支配人から従業員。芸伎さんから主婦達。米屋、写真屋、お土産屋さん、学校や塾の先生に経理士さん。銀行員に郵便局員。ストリッパー嬢に、そのおヒモさん。会社の社長に従業員。喫茶店のマスターにママさん。トラックの運転手さんにタクシーの運転手さん。と、客層が広い。 
 昼間は付き合いが無かったり、仲が悪かったりする間柄でも、ひと度、“あじさい”で顔を合わせると、蟠(わだかま)りが無くなり、仲良くなる。何時の間にか握手をしたり、肩を組み合っている。千春マジックであろうか……。

 ママとしては、此の店で啀(いが)み合われては困る。酒を飲む時は、寛い気持ちになって仲良くして欲しい。それが、やがては互いの誤解が融け、敵対者から大の仲良しになっている、というのが“あじさい”の醍醐味(だいごみ)である。
 
 こんな事があった。
 その夜のカウンターは、地元の人達と私でなぞなぞ遊戯(ごっこ)をしていた。
「千春ママと掛けて何と解く」と年配の商店主が出題。隙(すか)さず私が挙手。
「ハイ、東さん。貶(けな)したら勘定が倍になるよ。しっかり褒めとくれ」と、ニコニコママさん。
「それじゃ、脅迫だよ、貶そうと思ったのに」と、私。
「ダメダメ。さあ、やっとくれ。思いっ切り褒めとくれ。千春ママと掛けて?」
「うーむ。……よし、出来た。千春ママと掛けて!」
「何と解く!」と、全員が一斉に。
「名画の花と解く」
「その心は!!」
「観るに飽きなく、その美に崩れなく、永遠に咲き誇る。手にする事の出来ない高嶺(たかね)の花!」  

                    つづく。

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