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2010年3月 5日 (金)

肝っ玉姐さんの湯の町騒動記 20

20. 嬉しそうに語る顔が眩しかった…

 Mちゃんは熱海にいると云う。今度はちゃんとしたバンドで、矢張りボーカルを遣らして貰っていると云う。
「借りたお金は必ずお返ししますから、もう少し待って下さい」
「バカ。あれは貸したんじゃない、あんたの門出の餞別だ。それより、怠けたら承知しないよ。頑張りな。草津の山から応援してる千春ママさんを忘れるんじゃないよ!」
 それ以来、ずーっとMちゃんは音信不通だったが、つい先日、何と十年振りにMちゃんから電話が掛かった。今は九州にいると云う。歌は諦めたらしい。結婚して、自分で店を営(や)っていると云う。
 どんな店を営っているのか、どんな奥さんなのか、子供は何人いるのかと、色々聞こうと思ったが、止めた。無事で、健康でいる事丈分かれば、充分であった。
 草津は遠過ぎて行けそうもないが、九州に来るような事があったら、必ず立ち寄って欲しいとの事であった。
 ママも、九州に行く事は一生無いだろうと思い乍ら、
「有難さん。そん時は必ず寄るよ」と、云ってやった。
「Mちゃんも幸福そうで良かったー」嬉しそうに私に語って呉れる千春ママの顔が、眩しかった。

 こんな事も有った。開店して二年目の頃である。
 十二月初旬。師走ともなれば観光客はめっきり減って、草津の街も暇になる。此の時期は、地元の人達の息抜きの期間である。昼間は各種の会合、夜は寄り合いで飲み会や忘年会と、地元一色になる。
 その夜も、千春ママは宴会で座敷に出ていた。二次会を“あじさい”でやって呉れると云うので、お客さん達より一足先にお座敷を引いて、店に戻って来た。
 カウンターに一人客が居て、留守番の妹が何時になく顔を硬張(こわば)らせている。
「このお客さんがママに用が有るんだって」
「あっ、そう。いらっしゃいませ。あ、あんたもう帰って良いよ」妹は不安気な顔をし乍らも、帰って行った。 

                        つづく。

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