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2012年9月28日 (金)

隆明の“つれづれに”

1.老人に青春が帰って来た

 9月8日、午后。俺らは東京学芸大学附属高等学校の門を潜った。
 学内は学園祭で大賑わいの態である。
 俺らの目当ては第一体育館。入口で団扇(うちわ)を貰い、扉を開ける。
 中は溢れんばかりの超満員。団扇を渡された訳が分かった。
 外は9月だというのに33度の炎暑。館内は体感60度以上のまるでサウナ。
Gankutu1 席に座っている人達は全員といって良い程団扇を煽(あお)いでいるが、立見客はギュウギュウ詰めだから、煽ぐ空間もない。
 スタッフの一人が俺らを見つけ、前の席に案内して呉れた。一席だけ空いている。俺らの為に用意して呉れていた様だ。
 120分の芝居を規定に従い、75分に絞り込んでのハイテンポ故に、スピード感があって客を飽きさせない。難を云えば、じっくり見せる見せ場がじっくり出来ないので、泣かせ所が半泣きになって了った事だ。
 だが、奇跡としか言い様がない時間と空間が其処に在った。
Gankutu2 幕明けから終演迄の、一気に走った75分間。
 劇中、客は汗が噴き出る中、団扇を煽ぎ乍らも、眼と身体は舞台に釘付けになっている。私語が全然聞こえない。
 これは奇跡である。幕が閉じ、大拍手。暫し。
 突然、舞台も客席もパッと照明が入り、次から次と出演者、スタッフがステージに登場、拍手が鳴り止まない……
 帰り際に、出口の扉に突っ立っている、弟子ユースケの泣き顔を見た。
 上手いとか下手とかの問題ではない。
 必死で一生懸命に、そして伸び伸びと、臆する事もなく楽しんでいる、舞台上の若き演者達に、館内は一様に酔い痴れた。
 何か――置き去りにして来たもの、忘れかけていたものを、蘇(よみがえ)らせて呉れた様な、青春が帰って来た様な――生徒達に感謝感謝の暑い、熱い一日だった。
(俺らの脚本になる“巌窟王”が30年ぶりに蘇った)
                                                     つづく

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