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2013年1月 7日 (月)

隆明の“つれづれに”8

8.開き直ると、何故か……

 朗読の稽古が始まった。先ず一語一語を明瞭に、感情を入れずに正確に喋る事、これが何と難しい。どうしてもダラダラと繋(つな)がって了う。要するに歯切れが悪いのである。
「スタッカート、スタッカート! 雨が烈しく地面に叩きつける様に、ピチッピチッ、パチッパチッと弾ける様に。ダメダメ、違う違う! 一語一語をもっと短く、舌の切れを良くして――。ダメダメ、だから――」
 何を言ってるんだ、このオッサン。意味が分からん。スタッカート、スタッカートって何じゃ、日本語で喋らんかい。ダメダメって、先刻の拍手は何だったんだ? 誉めたと思ったら扱(こ)き下ろす。人の心を弄(もてあそ)ぶのがそんなに面白いか! よーし、こうなったらトコトンやったる、泣かへんぞー、ドーンと来い!と、肚の中で開き直った俺ら。
 すると、何故か、段々と素直に、言われた事に従いて行ってる自分に気付く。言われた事が一つ一つクリアされて行く。ディレクターも、
「そうそう、そうだそうだ。うんうんうん、良い良いその調子」と乗って来る。
 でも騙されてはいかん、良い気になったら危(やば)い。屹度、又落とし込みが襲(や)って来るに違いない。気を抜くな――と、警戒心を捨てずに稽古は進んで行く。
 不思議な事に、それからの稽古に駄目出しは一切無く、四時間に亘る稽古は、その長さを感じなかった。夢中で走った四時間の特訓は、俺らにとって「あっ」と云う間の出来事であった。
 歯切れを良くする稽古は戸惑ったが、その後の「ゆっくり大きく」はスムーズにクリア、アクセントは難関だと思われたが、関西弁と標準語は正反対の所が多いので、引っ繰り返せば直ぐ標準語になり、難なくクリア。どうやら俺ら音感が良いようだ。
「素晴らしい!」の煽(おだ)てに、「ホンマや」と素直に鼻を膨(ふく)らませる俺ら。
 扨、基礎が出来たら愈々、情感、表現力の段階に入るのだが、演出のオッサンは
「それは稽古しません。最初のテストで君の表現力は確認してます。直ぐリハーサルに入りましょう」えー? ホンマか?
                 つづく  

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